令和5年に発生した「札幌国税局不当課税事件」の現在までの流れと最新情報をお伝えします。
今回は、FAREASTEATING株式会社の国税不服審査に関する札幌国税不服審判所(以下「審判所」という)における審議が佳境に入ってきたため、Impactが審判所へ提出した意見書を通じて、審議の状況を開示します。
国家賠償請求訴訟と国税不服審査の経過
現在、以下のとおり2件の国家賠償請求訴訟と1件の国税不服審査が継続して審議されています。
北祥株式会社の事案
国家賠償請求訴訟 |
令和5年8月4日 訴訟提起 |
国税不服審査請求 |
実施なし |
北祥株式会社の事案
国家賠償請求訴訟 |
R5.8.4 訴訟提起 |
国税不服審査請求 |
実施なし |
FAREASTEATING株式会社の事案
国家賠償請求訴訟 |
令和5年8月4日 訴訟提起 |
国税不服審査請求 |
【1回目】 【2回目】 |
FAREASTEATING株式会社の事案
国家賠償請求訴訟 |
R5.08.04 訴訟提起 |
国税不服審査請求 |
【1回目】 【2回目】 |
北祥株式会社の事案
北祥株式会社の事案は、税務調査中にImpactより「売上除外の認定はでっち上げで、不当課税である」旨を札幌南税務署に指摘したところ申告是認(課税なし)とされ、「でっち上げた事実により不当に課税しようとしていたこと」に関して国家賠償請求訴訟を提起したものです。
申告是認により課税処理とはなっていないため、国税不服審査は実施されていません。
FAREASTEATING株式会社の事案
FAREASTEATING株式会社の事案における国税不服審査については、先述のとおり審判所での審議が佳境に入っています。
また、Impactは審判所に対して、令和6年7月5日付で「嘆願書」を提出し、公正な第三者的機関としての適正な審査を嘆願しました。
提出した嘆願書はこちら(PDF)
納税通信記事はこちら(PDF)
国税不服再審査の経過
FAREASTEATING株式会社の2回目の国税不服審査(令和5年12月19日以降)の経過は以下のとおりとなっています。
年月日 | 審査請求人(FAR社) | 原処分庁(国):札幌国税局 |
令和5年12月19日 | 審査請求書提出 証拠提出 | |
令和6年2月9日 | 答弁書提出 | |
令和6年3月26日 | 反論書提出 | |
令和6年4月18日 | 意見書提出 | |
令和6年5月27日 | 意見書提出(1回目) 証拠提出 | |
令和6年6月11日 | 意見書提出(2回目) 証拠提出 申述書1(古野社長)提出 申述書2(古野社長)提出 | |
令和6年6月12日 | 意見書提出 | |
令和6年7月3日 | 意見書提出 | |
令和6年7月5日 | 札幌国税不服審判所長宛て 『嘆願書』提出 | |
<口頭意見陳述開催> ※争点に関して『すれ違い答弁』に終始 | ||
令和6年7月26日 | 意見書提出(3回目) | |
令和6年8月22日 | 意見書提出 | |
令和6年9月11日 | 意見書提出(4回目) 証拠提出 |
FAREASTEATING株式会社の2回目の国税不服審査(令和5年12月19日以降)の経過は以下のとおりとなっています。
年月日 | 審査請求人(FAR社) | 原処分庁(国):札幌国税局 |
令和5年 12月19日 | 審査請求書提出 証拠提出 | |
令和6年 2月9日 | 答弁書提出 | |
3月26日 | 反論書提出 | |
令和6年4月18日 | 意見書提出 | |
5月27日 | 意見書提出(1回目) 証拠提出 | |
6月11日 | 意見書提出(2回目) 証拠提出 申述書1(古野社長)提出 申述書2(古野社長)提出 | |
6月12日 | 意見書提出 | |
7月3日 | 意見書提出 | |
7月5日 | 札幌国税不服審判所長宛て 『嘆願書』提出 | |
<口頭意見陳述開催> ※争点に関して『すれ違い答弁』に終始 | ||
7月26日 | 意見書提出(3回目) | |
8月22日 | 意見書提出 | |
9月11日 | 意見書提出(4回目) 証拠提出 |
国税不服審判所と裁判所
国税不服審判所とは?
国税不服審判所は、国税通則法第78条に規定され、国税庁の特別の機関として設置されています。
国税不服審判所の使命は「税務行政部内における公正な第三者的機関として、適正かつ迅速な裁決を通じて納税者の正当な権利利益の救済を図るとともに、税務行政の適正な運営の確保に資するところにある。」とされており、国税組織内における適正公平課税の最後の砦と位置付けられています。
国税の更正処分に不服がある場合、国税不服審査を提起した後でなければ裁判所に対して課税事件の取消訴訟を提起できません。
審判所と裁判所の違い
裁判所と審判所は似ていますが、大きな違いの一つとして「職権探知主義」があります。
審判所の審判官には“争点に関して職権で調査する権限”が与えられており、審判所自らが調査し事実を確認して判断することが認められているのです。
もう一つの大きな違いは、審判所が完全な第三者で構成されているのではなく、身内とも言える国税当局職員が3分の2を占めているという点です。
◆審判官の内訳
・国税職員3分の2
・民間の専門家3分の1(特別公務員として任命された弁護士、税理士、公認会計士等)
以上の合議体により、審議及び裁決を行っています。
審議及び裁決をおこなう審判官のうち3分の2が国税職員(2年~3年の短期間の人事異動により不服審判所の勤務を命じられた者)であるため、過去の裁決事例を見ると「国税当局寄り」の裁決が出やすい傾向にあることも否めません。
Impactが審判所に対して令和6年7月5日付で「嘆願書」を提出し、公正な第三者的機関としての適正な審査を嘆願したのは、上記のような状況を危惧しての判断です。
本件は札幌国税局管内で起きたことですが、国税が税務調査や課税処理に関するルールを無視するのであれば、どこの地域のであっても起こりうる事案です。
改めて、私たち税理士法人Impactは国税が「規則に則り納税者が納得できる適正・公平な対応をすること」を強く求めてまいります。